新規事業開発の実務

花粉症 (>_<)

大企業病の本質を理解する

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ベンチャー企業、上場企業、フリーランスと様々な立場で事業に携わってきた経験から、大企業病というものの本質を考えてみたい。

 

「正しいことをしたければ偉くなれ」

踊る大捜査線、いかりや長介演じる和久平八郎の言葉だ。これは会社に代表される組織のインセンティブ設計ををよく表している。

サラリーマンのモチベーションに「出世」という長期インセンティブの占める割合は大きい。「正しいことをしたければ偉くなれ」という言葉は、「昇進と権限は連動する」という至極当たり前ことをいっているようにも見えるが、その優先順位に触れているところが重要だ。出世・昇進が先で、正しさはその後、といっている。

また、この言葉は「偉い人ほど正しい」という前提に基づいていると考えられる。何が正しく、何が正しくないのかは難しい問題に見えるが、この場合 "組織の考え方に照らして" と考えれば社員にとっては身近でわかりやすいだろう。

 

組織は「自主性」に逆インセンティブをかけることがある

前述のロジックに従えば、会社に所属する若手など "これからの人たち" は、「組織が考える正しさ」と「自らが考える正しさ」の間で葛藤が生じた場合、「自らの正しさを提示せずにまずは出世を目指す」、ということになる。

出世は結果だが、その鍵となるのは「信用」だ。「組織の判断基準」や「再現性」は信用 (専門用語で「社内クレジット」) という形で積み上がっていき、出世・昇進をもたらす。そこで先ほどの表現は「出世」という長期インセンティブに動機づけられている社員は、「自らが正しいと考える行動」よりも「信用を得られる行動」を選択する可能性が高い、と言い換えてもよい。

これは、組織が「各人が考える正しさの発露」に逆インセンティブをかけていると言える。なぜそのようなことをするかというと、各人が自分の正しいと思うままに行動すると組織として収集がつかないからだ。独創性より再現性を重視する業種 (銀行や製造業)・職種 (管理者・職人) ではその傾向はより顕著だろう。

逆に、クリエイティブな業種など、多様性を必要とする組織のリーダーは長期インセンティブが信用獲得や軋轢を助長していないか意識する必要がある。インセンティブは、組織を構成する人々の気質・性質と掛け算なので求める結果とモチベーション設計のさじ加減を常にチェックするように心がけたい。

※ 見出しでは、「自らが考える正しさを発露する」という行為に「自主性」というラベルを付けている

 

「大企業病」とは

ようやくタイトルの結論であるが、「大企業病」とは「長期インセンティブに動機づけられた社員が、ビジネス活動において組織からの信用獲得を最優先すること」そして「その結果、議論の浮揚や顧客利益といった本来的な企業活動を毀損すること」だと考えられる。

出世や昇進といった長期のインセンティブと、報奨金やボーナスといった短期のインセンティブ、どちらがよくてどちらが悪いというわけではない。長期インセンティブの弊害に「大企業病」という名前がついているのは、終身雇用を前提とした再現性に重きを置く組織が、その弊害の代名詞として扱いやすかったからではないかと思う。

 

大企業病の先に求められるもの

今回取り上げた「大企業病」は、しばしば「馴れ合い」や「同調圧力」、「予定調和」といった言葉に言い換えられる。これらは組織のインセンティブが行き過ぎてしまった結果の弊害であり、適切に機能している場合は「調整力」というビジネスを行う上で必須のスキルになる。

次回は、「調整」をビジネススキルと捉え、その先にある「問題提起」とそのあり方について考えてみたいと思う。

(以下記事に続く)

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