新規事業開発の実務

花粉症 (>_<)

目次 : 迷ったらここへ

このページから、新規事業開発の各フェーズへ飛ぶことができます。

 

ここでは、「新規事業開発」という仕事の一連の流れを紹介しています。

事業開発の大きな流れ

経験的には、新規事業開発における基本的な流れは以下の図のようになります。もちろん、事業主体や参入領域によってケースバイケースです。

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事業開発の大きな流れ

このエントリをインデックスとして、それぞれについては、個別に記事を書いていきたいと思います。

 

フェーズ0. 事業開発の前に

フェーズ1. 参入領域の決定

 

事業開発フェーズ2. 予算確保 (未着手)

事業開発フェーズ3. 価値仮説検証 (未着手)

事業開発フェーズ4. グロース (未着手)

 

趣旨

この記事を読んでいる方は、事業開発について悩んでいる、もしくは事業開発についての情報が知りたくて集めている方かと思います。

私は、GREEやガリバーインターナショナルといった上場企業で、新規事業開発に携わってきました。それ以前は、コンサルタントとして NTT docomo や 日本マイクロソフト といった大手企業の事業開発の支援を行っていました。

かれこれ10年以上、新規事業開発に関わってきましたが、この仕事は毎回毎回が初挑戦で、正解のやり方、事業開発成功の定石というものはほとんど存在しないように見えます。

それでも、何度も試行錯誤やトライを重ねるうちに、共通する手順や抑えるべきポイントのようなものは見えてきたように感じています。

 

先の見えない時代、私のように事業開発に携わるビジネスマンの一助となればと、過去の経験を元にまとめてみたいと考え、「実践」にフォーカスして書いてみたいと思います。

 

ケーススタディ

 

 

最後に

一連のエントリは経験に基づいてまとめたものです (要するに体感)。間違った記述や、認識違いは直していくので、ご指摘いただけると非常にありがたいです。

【事例紹介】ランサーズ × Karman Line

カーマンライン株式会社では、一部上場や民営化公団といった大企業から、ベンチャー・スタートアップまで様々な企業の新規事業開発をご支援させていただいております。

今回は、支援事例としてランサーズ株式会社 代表取締役 秋好 陽介 さんにインタビューをさせていただきましたので事例として掲載させていただきます。

ランサーズ秋好社長インタビュー

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<ご相談いただいたきっかけ>

ランサーズが生み出す新規事業には、BizDev経験だけでなく、技術やエンジニリングの知識も非常に重要だと考えています。

カーマンライン代表の許 直人さんはその双方に知見があり、GREEIDOMで新規事業開発に携わった実績もあるため、上手くはまるのではないかと考えたのが今回の取り組みのきっかけです。

 

<コンサルティングのスコープと成果>

2018年秋ごろから半年に渡り、サポートしてもらいました。前半はコンサルティング、後半は新規事業開発に取り組んでもらいました。

前半のコンサルティングフェーズでは、直人さんの事業開発経験と客観的視点が活きました。ランサーズのエンタープライズ商品に対する的確なアドバイスを受け、私も現場へ進言することができました。

また、並行して走っていた複数システムの統合についてもシビアに言及してもらったことで、早い段階で課題がクリアになりました。これがなければ、改善までの時間がさらにかかっていたかもしれません。申し分のない仕事をしてもらったと思います。

 

<事業開発支援の手応え>

後半の新規事業開発フェーズでは、ランサーズ社の「フリーランスCMO」として、他社とのアライアンス推進やイベント実施に取り組んでもらいました。

半分はランサーズ社、半分は外部の人間というファジーな立ち位置で動いてもらったことで、良い面も悪い面も含め、我々が直接知聞くことのできない“ランサーズ社に対する生の声”を知ることができたのは貴重です。

さらに、直人さんの人脈から新たな繋がりや案件へと発展しました。多くのアライアンスを築けたことは、とても有意義に感じています。

 

準委任契約のため、現場とのやりとりが難しい側面もありました。しかし、初対面の広報担当者やパートナーにも物怖じすることなく意見を述べ、周りを巻き込んで引っ張っていく直人さんの推進力にはとてつもないものがあります。成果にコミットするプロとして、あるべき姿を見せてもらいました。

社内関係者とリレーションをより強固にし、さらに現場へと入り込んで動いてもらえたら、ビジネスパートナーとしてさらに良い関係を構築していけるのではと思っています。

終わりに

インタビューは以上です。

今回のプロジェクトでは、以下のリンクにある通り個別の業務を超えて、企業とフリーランスのコラボレーションという、新しい働き方に挑戦させていただきました。

雇用の垣根を超えた新しい働き方の実証

本プロジェクトは、ランサーズ正社員とフリーランスのコラボレーションによって事業を推進するモデルケースとして取り組んでまいります。ランサーズは、事業・組織共にオープンタレントの活用を実現し、個のエンパワーメントを推進します。

(ランサーズ プレスリリースより)

インタビュー中にもある通り、共通のビジョンやミッションに向かって団結する社員と、異なる経験や文化を持つ外部人材のコラボレーションは、予定調和や恣意的な意思決定とは異次元のパッションのぶつかりあいとでもいうべき非常に熱いものでした。

このような異文化のコラボレーションがうまくいったのは、秋好社長が未来のワークスタイルといったものを本気で考え、現実にチームに対して大胆に権限委譲し、忌憚のない意見のぶつかり合いを認める、文字通り同社のミッション・ビジョンに対する真剣さの現れであると感じます。

今回のプロジェクトでは変革の萌芽を生み出したに過ぎず、ランサーズの新規事業はこれからも様々な領域に大きく拡大されるものと思います。

だれか部下が作ったExcelの数式をレビューしてやってくれ

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プログラミングの世界では、 ソースコードレビューがかなり一般化されたように思う。モダンな開発手法を取り入れている現場では、どこも プルリク → レビュー → マージ → リリース という手順を踏んでいるんじゃないだろうか。

進化したコードレビューと比較して、ほったらかしなのが Excel である。

私は仕事がら、事業計画書をしょっちゅう作る。
↓ こういうやつだ。

作った事業計画は経営者や上司、投資家などのチェックに回るのだが、この中にある数式をきっちりレビューする人を、ほとんど見たことがない。

一見それっぽい上記のグラフだが、セルの中身をがどうなっているかというと、売上が毎月100万円増えると "計画上、決めている" 。ビジネスとしては「んなアホな」と思われるだろうが、事実、売上計画が定数決め打ちになっている事業計画は山程ある。

また、広告費は売上の20%で "逆算している" 。売上は増えることになっており、広告費は売上からの逆算であるから利益が出るのは当然、ということになる (あくまで計画上)。

この例では、例えばPMFが見えるまで売上は広告費と相関しない点や、マーケティングの効用は逓減する点、効率のよいセグメントが見つかったとしてもやがてサチる事実は隠蔽されている。

事業計画は「数値」ではなく、「数式」を見る

センスのよい投資家は、事業計画から「売上」のような絶対値ではなく「ビジネスの構造」を見る。

広告効率が粗利を下回れば規模のビジネスに発展させることができる「プッシュ型」ビジネスなのか、ネットワーク効果が最大化すれば広告投資対効果が指数関数的に改善する「ネットワーク型」のビジネスなのか、LTVが総コストを上回れば単月赤字でも成長できる「サブスクリプション型」なのか、そのビジネスの「型」を、事業計画から理解する。

収益性改善には「KPI」ではなく「変数」に注目する

アイデアはよいが、計画上お金が回らないビジネスがある。そのような場合は、計画を構成する「変数」を改善する。例えば、物販だったら仕入原価、メディアだったら人件費、SaaSビジネスだったら開発費と営業コスト。

APPUやROASのようなKPIは、計画時点では改善できずあくまで見込みであるため議論をしても時間の無駄だ。また、KPIはサービスの認知率や事業ステージによってドラスティックに変化する。二次関数的な事業計画は、サービスがローンチされればすぐに使い物にならなくなるだろう。

グラフや数字ではなく、「数式」をレビューして欲しい

先ほど挙げた例はごく簡単なものだが、実際に現場で使われる事業計画はもっと重厚長大で難解なものだ。それゆえ、表面的な数値がどう算出されているかはブラックボックス化され、承認する側は右肩上がりのグラフを見ながら気になったポイントだけをチェックするようなレビューになりがちだ。

だが、きちんと調べてみるとロジックに明らかなバグがあることも少なくない。事業の是非を判断する重要なソースに、瑕疵があることは許されるべきではないだろう。

意図的に隠蔽されている情報

人が作るロジックには意図が含まれる。そこには、様々な利害が入り込む余地をレビューする人間は理解しておくべきだろう。

金融機関が、壮大なExcelをわざわざ紙で印刷して持ってくることがある。なぜ紙でなければならないのか。単なる親切心であればよいが、全く別な意図である可能性は潰して置かなければならない。

部下が、スマートな成長曲線を示してきた。本来ビジネスはそんなに簡単には右肩上がりにならないが、そこに込められた思いを信じて賭けるのか、リジェクトするのか。

 

人が作るロジックには意図があり、交錯するビジネスマンの意図がプロダクトを、サービスを作り出す。

金を出す人間は、そのことにもっと自覚的になるべきであり、絶対に手を抜いてはならない。

事業家は、合理的に描かれた地図の上から混沌の海に飛び込む

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ある事業家と仕事の話をしている時に、「成功する事業かとは論理的な生き物か、それとも直感的か」という "ような" 話題になった。

企業内で活躍しているか、独立しているかを問わず、ある程度の結果を出しているビジネスマンは素養もしくはスキルとしてロジカルな思考を持っており、単純な二元論ではないと思う。

ビジネスプランを作る時に行う調査や分析、戦略立案のフレームワークは、合理的なゴールまでの地図を描いてくれる。

差がつくのは、その地図に描かれたゴールへの冒険を、実行に移すときだ。

地図から見える景色と現実は別物

日本地図でも、世界地図でも、縮尺の大きい地図を想像してみて欲しい。ある地点からある地点まで到達するためのルートは見えている。だが、実際に移動するとした場合、そこには山があり、谷があり、変化する天気や地域の情勢があり、燃料や食料といった資源が減り続ける恐怖と戦いながら進む道のりは地図からは想像できない混沌の世界だろう。

世界的に有名なデザイナー、奥山清行は「プロというのは非常に保守的だ。人は、知識を得れば得るほど慎重になる」と語った。Linkedinの創業者、リード・ホフマンは「リアルを知っていたらPaypalを立ち上げる気にはならなかっただろう」と著書に書いている。

事業においても、コンサル に頼めばきれいなビジネスプランの地図はできあがる。だが、実際に飛び込み、予測できない困難と戦いながら進むのは事業家自身であり、その原資を出すのは経営者や株主、投資家といった人たちだ。

経験が合理性の箍をはずす

合理的に描かれた、全てを見通すかのようにみえる地図から、現実という混沌の海に飛び込む時、頼りになるのは「合理性」や「論理」の先にある「嗅覚」のようなものだ。ビジネスプランが地図だとしたら、嗅覚はニーズを指し示すコンパスの役割を示す。

「どういう道筋かわからないが、この方向の先に成功があるようだ。行ってみる価値がある。」

私の周りで、頭ひとつ飛び抜けているような事業家は、みんなそれぞれの「コンパス」を持っている。無知な状態から知識を得、分析し、恐怖を乗り越えてリスクを取るためのコンパス。

「論理」と「直感」は二元論ではなく、基礎力としての「論理」と合理性の檻を打破するための「直感」という、守破離の関係にあるのではないかと思っている。

そしてその直感とは、数多くの経験から導き出される、「それぞれの事業家が持つ一点物のスキル」なのである。

パーソルキャリア・ランサーズ事例【日経産業新聞】

当社では、企業の新規事業開発におけるハンズオン型の支援を特徴としています。参入を検討されている市場の調査や、戦略・事業計画の作成だけでなく、支援先企業のいち員としてパートナー開拓を行ったり、事業開発を行っています。

その様子を日経産業新聞に取材いただいたので、事例として紹介させていただきます。

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(転載不可のため、一部のみ抜粋となります)

許直人さんはクラウドソーシング大手、ランサーズのフリーランスCMOに就任した。エンジニアや広報、法務担当の社員らとチームを汲んで、新規事業の開発を進める。


パーソルキャリアでは企業向けのIT研修プログラムの立ち上げんkかかわる。昨年11月から企画がスタートし、今年5月からサービスを始める計画だ。プロジェクトの中心メンバーは社員2人とフリー2人で、許さんは市場調査やサービス内容を主に担当する。


プロジェクトリーダーの片岡秀夫ゼネラルマネージャーは「許さんなどフリーの人はメンターのような存在。お互いに目標を共有し、豊富な経験から我々の悩みに適切に答えてもらっている」と話す。新規事業に関する幅広い人脈を持っていることも魅力だという。 

カーマンライン株式会社では、一部上場や民営化公団といった大企業から、ベンチャー・スタートアップまで様々な企業の新規事業開発をご支援させていただいております。

新規事業開発においては、企画・サービス構築・グロース・マネタイズ・拡大とフェーズによって必要とされる人材リソースの要件が大きく変わってきます。

当社では、ビジネスのフェーズによって適切な人材を、リレーのバトンを渡すようにスイッチすることにより、事業開発のあらゆるニーズに対応することが可能です。

今後とも、事業開発を企てる企業のお役に立てるよう、よりよいソリューションを開発・提供して参ります。

これからもどうぞよろしくお願いいたします。

人は無意識のうちに、自分の自由を差し出して、 管理される道に進む

だいたい、なぜ人は手段と目的を取り違えるのか?

それは実は、その方がラクだからなのだ。

実は自由でいるということは厳しい。
そして難しい。

管理されている方が、圧倒的にラクなのだ。

だから人は無意識のうちに、自分の自由を差し出して、
管理される道に進もうとする。

知的資本論「増田宗昭の独白」より

この言葉には共感するし、納得する。では逆に、厳しく難しい自由を求める人はなぜそんなことをするのだろうか。


ビジネスの世界では、事業ステージによって不確実性に対する「管理」の度合いが変わってくる。

右側の世界は、昨年より今年の方が5%よくなって欲しいという世界。昨日と同じ明日が来ることを望む人々が暮らしている。

左側の世界は、死ぬか生きるか多産多死な混沌の世界。強いものが望むだけ変えられる世界を目指す人々が暮らしている。

考え方の問題なのだろうか。

悩み揺らぎながらたどり着くのだろうか。

生まれつきの性質なんじゃないかと思っている。

フリーランスは空気を読むな

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独立する前、しばしば上司と「サラリーマン力 (りょく) は大事だよね」という会話をした。優秀なベンチャー出身者や、フリーランスを社員として雇い入れた後、会社員独特のお作法がわからずパフォーマンスが発揮できないことがあったからだ。

ベンチャー出身者やフリーランスは、サラリーマン力の中でも特に「内部調整力」が弱い。少数精鋭で顧客やマーケットと全力で対峙する現場ではそんな力は必要とされていなかったのだから当然だし、別に悪いことではない。

逆に、大企業でサラリーマンを長くやった人間がピンとして独立すると今度は違う能力が必要になってくる。今まで培ってきた "調整力" をむしろ打破していく力。 "空気読まない力" 、もっと言えば "空気読みきった上で厚かましくスルーする力" とでも言うべきものだ。

調整力ってこんな感じ

大企業で、たくさんの部署・社員たちと、力を合わせて事をなすにはたくさんの内部調整が必要だ。いわゆるネゴシエーションである。
例えば、次の企画遂行のために社内の各事業部から協力を引き出す必要があるとする。

「○○事業部と、××事業部って、最近どっちが売上大きかったっけ?」
※ 有力な部署ほど力も強く、忙しく、社員の自負も高いので位置関係を把握

「××部長って△△本部長が前職の☆☆から引っ張ってきたんだよね?」
※ 学閥や前職つながり所以の派閥があれば、できるだけ上から話を通すのが基本

「○○さんってこないだ△△本部長から飲みに誘われてたよね?LINE知ってる?」
※ プライベートな関係は往々にしてビジネス上のつながりに勝ることがある

「△△さんにとって、これをやる意義ってなんだっけ」
※ メリットがないと人は動かない

人によっては「そんなことに時間とコストをかけるなんて、顧客軽視だ。そんな会社はけしからん」と思うかもしれない。しかしまあ、会社組織も人でできている。郷に入っては7割くらいは郷に従うべきというか、必要となれば最高効率で行うのが結果的にコスト削減、顧客還元になるだろう。

与えられた環境の中で、自分が発揮できる最大の成果を出すのがサラリーマンのプロ意識だと思う。

調整力を超えた「かきまわし力」

チームで大きな仕事をするために、調整力の研鑽は欠かせない。

ところが、独立してフリーランスになると、今度は違う能力が求められることに気がついた。組織としての健全な葛藤、軋轢を生み出す「かきまわし力」とでもいうべきものだ。

ここからの話は、以下記事にある「長期インセンティブが組織にもたらす作用」を前提に書いていく。

長期のインセンティブが "効いている" 組織では、メンバーの行動選択に "信用獲得" に向かう力がかかる。私たちはそれでなくても和を持って尊しとなす民族だし、空気読めない人を公然と叩く素養も持っている。

そんな組織に、「期間限定の人たち」が入ってくる。コンサルタントやフリーランス、顧問のような属性だ。この人種は組織の中で活動するが、長期インセンティブが効かない人たちである。彼らは、結果がでなければいつでも切られる。契約期間が切れるまでの短い期間に、高いギャランティに見合ったパフォーマンスを出すことを最優先に考える。

お尻が決まっている (契約期間終了が見えている) 人の方が、長期の雇用が確保された安定した立場の人より焦るのは当然だ。功を焦った「期間限定の人たち」は「調整」を軽んじてハレーションを起こしたり、時間やコミュニケーションが足りずに組織を動かせず、結果が出ないまま現場を去る。

要するに、難しいのだ。

お主がやらねば誰がやる

それでもフリーランスは、正規雇用の人たちができないことをやるために雇われている自覚を持ち、ハレーションや軋轢を恐れず結果にフォーカスして行動しつづけるべきである。

『内心、うまくいかないと思うけど、下手に発言して信用を失いたくないので他部署のことだし黙っていよう。』

『このビジネス、ここをこうすればいいのに。3年後に自分がリーダーになったらそうしよう。』

長期インセンティブが弊害を生んでいる組織では、正規雇用社員の心の中には、このような眼の前の問題を先送りにする動機づけがなされている。だれも納得していなくてもモノゴトは合意されるし、だれも納得していなくてもなんとなく予算がついて進んでいく。

フリーランスに3年後はない。他部署とか自部署とかいう組織上のクレジットの積み重ねもない。ただただ、いま請けている仕事の結果にフォーカスして行動するべきだ。

もちろん、強引な主張や調和を無視した行動で結果を毀損してはならない。 "空気読みきった上で厚かましくスルーする" のは、あくまでも「最高の結果を出すため」に、眼の前にある馴れ合いや先送りに対して問題提起や代案の提示を行うためである。

完璧な個は存在せず、仕事というのは様々な技術や知識や動機や想いをもったプロフェッショナルのコラボレーションだ。フリーランスであるからには、自分にしかできない価値を自覚し、提供できるように心がけたい。

大企業病の本質を理解する

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ベンチャー企業、上場企業、フリーランスと様々な立場で事業に携わってきた経験から、大企業病というものの本質を考えてみたい。

 

「正しいことをしたければ偉くなれ」

踊る大捜査線、いかりや長介演じる和久平八郎の言葉だ。これは会社に代表される組織のインセンティブ設計ををよく表している。

サラリーマンのモチベーションに「出世」という長期インセンティブの占める割合は大きい。「正しいことをしたければ偉くなれ」という言葉は、「昇進と権限は連動する」という至極当たり前ことをいっているようにも見えるが、その優先順位に触れているところが重要だ。出世・昇進が先で、正しさはその後、といっている。

また、この言葉は「偉い人ほど正しい」という前提に基づいていると考えられる。何が正しく、何が正しくないのかは難しい問題に見えるが、この場合 "組織の考え方に照らして" と考えれば社員にとっては身近でわかりやすいだろう。

 

組織は「自主性」に逆インセンティブをかけることがある

前述のロジックに従えば、会社に所属する若手など "これからの人たち" は、「組織が考える正しさ」と「自らが考える正しさ」の間で葛藤が生じた場合、「自らの正しさを提示せずにまずは出世を目指す」、ということになる。

出世は結果だが、その鍵となるのは「信用」だ。「組織の判断基準」や「再現性」は信用 (専門用語で「社内クレジット」) という形で積み上がっていき、出世・昇進をもたらす。そこで先ほどの表現は「出世」という長期インセンティブに動機づけられている社員は、「自らが正しいと考える行動」よりも「信用を得られる行動」を選択する可能性が高い、と言い換えてもよい。

これは、組織が「各人が考える正しさの発露」に逆インセンティブをかけていると言える。なぜそのようなことをするかというと、各人が自分の正しいと思うままに行動すると組織として収集がつかないからだ。独創性より再現性を重視する業種 (銀行や製造業)・職種 (管理者・職人) ではその傾向はより顕著だろう。

逆に、クリエイティブな業種など、多様性を必要とする組織のリーダーは長期インセンティブが信用獲得や軋轢を助長していないか意識する必要がある。インセンティブは、組織を構成する人々の気質・性質と掛け算なので求める結果とモチベーション設計のさじ加減を常にチェックするように心がけたい。

※ 見出しでは、「自らが考える正しさを発露する」という行為に「自主性」というラベルを付けている

 

「大企業病」とは

ようやくタイトルの結論であるが、「大企業病」とは「長期インセンティブに動機づけられた社員が、ビジネス活動において組織からの信用獲得を最優先すること」そして「その結果、議論の浮揚や顧客利益といった本来的な企業活動を毀損すること」だと考えられる。

出世や昇進といった長期のインセンティブと、報奨金やボーナスといった短期のインセンティブ、どちらがよくてどちらが悪いというわけではない。長期インセンティブの弊害に「大企業病」という名前がついているのは、終身雇用を前提とした再現性に重きを置く組織が、その弊害の代名詞として扱いやすかったからではないかと思う。

 

大企業病の先に求められるもの

今回取り上げた「大企業病」は、しばしば「馴れ合い」や「同調圧力」、「予定調和」といった言葉に言い換えられる。これらは組織のインセンティブが行き過ぎてしまった結果の弊害であり、適切に機能している場合は「調整力」というビジネスを行う上で必須のスキルになる。

次回は、「調整」をビジネススキルと捉え、その先にある「問題提起」とそのあり方について考えてみたいと思う。

(以下記事に続く)

blog.karmanline.co.jp

 

 

これからは「ギルド型組織」がアツいと思う

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みなさんは、ゲーム以外で「ギルド」という言葉を耳にしたことはあるだろうか。私の場合、年明けにSNSでこのノートがシェアされているのは結構目にしていた。

実のところ、私は昨年からこの「現代版ギルド」とでもいうものに興味を持ち、あれこれと調べているのだが、実はいろいろなところで同じ様な動きが起き始めているようなのだ。

「ギルド」とはなんなのか。現時点では「"関係性" を中心とした新しい組織のあり方」ではないかと考えている。まだ書けることは少ないが、整理・考察してみたので、興味のある方にはぜひご意見をいただきたいと思う。

 

本論に入るまでの前置きが長いので、急ぐ方は「ギルド型組織とはどんなものか」あたりからどうぞ。

 

現代に蘇る「ギルド」

この記事で扱う "現代版ギルド"、もしくは "ギルド型組織" というものに、まだこれという定義はないが、まずは「個人の自由や裁量を尊重しつつ、ひとつの団体として仕事をうけたりこなしたりする集団」くらいに思ってもらえればいい。イメージで言うと、従来型の「カイシャ組織」に比べてカチッとしてない、ゆるふわっとした組織だと捉えて欲しい。詳しくは後述するが、法律上「会社」なギルドも多いのであくまでイメージで。

一応、原義っぽいものはWikipediaから引用しておく。

ギルドGuildZunftArti)は、中世より近世にかけて西欧都市において商工業者の間で結成された各種の職業別組合商人ギルド・手工業ギルド(同職ギルド)などに区分される。一般に封建制における産物とされる。

 

ギルド型組織が、同時多発的に発生している 

調べてみると、"ユーザーの行動を設計するデザイナ" 深津 貴之さんが2013年に立ち上げた THE GUILD を皮切りに、大企業の中にギルド的な組織を志向した事業部が立ち上がったり、大企業から独立した個人が組織的なブランディングを仕掛けていたりと、同業種・異業種個人間の「重婚的組織形成」とでもいうべきものが、私の身の回りそこらじゅうで起こっている現実を目の当たりにした。

「重婚的」というのは冗談だが、個人事業主が複数の企業や団体に属したり、会社を経営している人が他の会社に所属したり、なんというか logical conjunction (AND) な感じなのだ。

 

参考 : ギルド型組織のイメージ

定義がないので分類も不可能なのだが、記事の内容を理解しやすくするため「ギルド型っぽい」組織をいくつか紹介したい。実は他にもたくさんあるのだが、こういうところに書いて問題なさそうなところ (ひどく怒られなさそうなところ) を無許可でピックアップした。

  •  UZUMAKI
  • web系の最前線で活躍するプロのエンジニアやデザイナー、ディレクターが所属しており、それぞれが、個人事業主や副業が許されている正社員。
  • ONNE / BizConcier
    デジタルマーケティングや事業開発のプロフェッショナルが所属。メンバーに重複があるため併記したがそれぞれ独立した組織である。組織を構成するのは個人や小規模法人など様々。

なお、本記事はこれら組織のビジョンや活動を示すものではなく、考察はすべて筆者の主観による「勝手なもの」であることをお断りしておく。

 

ギルド型組織とはどんなものか

様々な個人・法人へのヒアリングから、現時点では「ギルド型組織」というものを以下のように捉えている。これは、特定の団体を指していないし、パブリックな定義でもない、完全に個人的な捉え方だ。

【ギルド型組織】

ギルド型組織とは、市場に対してオープンな、束縛されることのないタレントによって構成された、関係性を軸とした人的集合体である。株式会社、合同会社、有限責任事業組合、または企業の一部門など多様な形態を取るが一様ではない。

中でも「オープン」「束縛されない」「関係性」という部分がポイントだと考えている。生煮えで非常に雑な切り口で恐縮だが、特徴的と考えている部分を以下に図示した。

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これらは検討中のものであるため、今後より適切な切り口があれば随時更新していきたい。

ギルド型組織の特徴について、以下でもう少し詳しく解説する。
 

ギルドは、縛らない 

冒頭で「重婚的」のような表現を使ったが、"組織が個人を縛らない" ことはギルド型組織の最大の特徴だ。ギルドのメンバーは、個人で仕事をしたり、他のギルドに所属したり、かなり自由な働き方を許容されている。

個人と組織の力関係が従来と逆転したかのような感覚を受ける。私は、この動きの背景には大きく以下の3つがあると考えている。

  1. 人口動態による若手人材の希少化
  2. テクノロジーを扱える個の生産性が飛躍的に増加
  3. ネットによるつながり構築・維持コストの無償化

このような環境下において、ギルド型組織は従来型組織の特徴である「終身雇用」や「経済的安定性」とは異なる価値を提供することで飛躍できる可能性を示唆している。

 

「異なる価値」とはなんだろうか。

 

ギルドは、市場から識別可能なビジネスマンで構成されている

ギルド型組織の中心メンバーは、顔や名前を出して仕事をしている。名前で検索すると何かしらヒットするような人たちだ。彼らは単にオープンであるだけでなく、オープンであることを武器として利用する。

ギルド型組織のメンバーは、ギルドによって個人事業主だったり、法人だったりと、さまざまである。逆に言えば、構成員が個人事業主であるか法人であるかは、彼らにとってあまり重要な意味を成さないのかもしれない。

「個人」と「ギルド型組織」の関係は業務委託が比較的多く、株式会社・LLC・LLPでは中心メンバーは株主/役員相当。先ほど「オープン」「識別可能」と書いたが、ギルド型組織の中でも前に出る、ロールモデルのような人物はボードメンバーが多い。ただ、一般的な会社組織より敷居は低く、流動的であるように感じた (LLCやLLPは特に)。

 

従来型組織とは異なるギルドの強力な提供価値のひとつめが「短い商流による、メンバーへの高い経済的還元」である。

 

ギルドは、個人とその関係性に中心を置く

ギルドは、「参加メンバー個々人間の関係性」や「組織とメンバーの関係性」を基本にしている。どのギルド型組織と会話しても、組織であることの規模的なメリットよりも、関係性を重視しているように感じる。

例えばIT業界でも、昔から首都圏コンピューター技術者組合 (現 : PE-BANK) や首都圏ソフトウェア協同組合など、個人事業主や中小法人の集まりはあった。彼らの提供価値は共同受注 (大きな仕事をみんなで請ける)、共同宣伝、確定申告代行や共済などの福利厚生、信頼性の担保など中小個人ではカバーできない機能を果たしてきた。先ほどの "規模的メリット" はつまりそういうことだ。

現代のギルド型組織も同業者や異業種の集まりとして前述のような組織であることの規模的なメリットは提供しているが、それ以上に "価値観" への共感、一緒に働きたい仲間としての "人柄" や "スキル" のアセスメントを非常に重視している点は大きな特徴である。

ここでいう "価値観" は、「世界をより良くしたい」という、ちょっと前に流行った壮大な "ビジョン" や "理念" というより、モノゴトや世界で起きる事象に対する感じ方や仕事の流儀といった、もっと身近なものである。同じものを見て同じように楽しみ、憤り、変えていきたいと思う。そういう感性の共有を彼らは大切にする。

 

従来型組織とは異なるギルドの強力な提供価値、ふたつめは「高次元かつ重複的関係構築がもたらすコミュニケーションコストの排除」である。

 

ギルドは、持続的な関係性の中で個にアセスメントを与える

「"価値観" 、"人柄" はわかるがスキルは関係性ではないのではないか」と感じる方がいるかもしれないが、そうでもない。いまギルド型組織が勃興しているエンジニアリングやデザイン、マーケティングといった領域では知識レベルを定量化することは容易だが、スキルレベルを定量化することは難しく、「あいつはこの分野に強い」「私はこういった流派だ」というように組織の中で相対的に評価することがわかりやすい。逆に組織に所属していないビジネスマンは、クライアントからすると自己申告と実績だけでしか評価できない。実績が公開されていないと怖くて発注できないし、実績の評価も過去クライアントとの相性によって揺らぐので必ずしも正しい指標とは言えないだろう。

その意味で、ギルド型組織は、組織と個人の持続的なつながりによって個人のアセスメントを分散ネットワーク的に担保できると言える。

 

クライアントサイドにとっての価値

このような組織は、発注側にとってどのような価値があるのだろうか。簡単にまとめておく。

  • 信頼性
    前述のアセスメント効果により、個人に頼むよりは人材の質を想像しやすい。また、ギルド型組織の多くは会社や団体といった形態をとっているため契約やコンプライアンスの面でも使いやすい。
  • 視認性
    ギルド型組織は個々人がばらばらになっているより見つけやすい。また、統一的なブランディングがなされており、目的にあったチームかどうかを確認しやすい。
  • 流動性
    多くのギルドにはチームをコーディネートする機能が備わっている。ギルドは、クライアントの目的に応じて構成メンバーや外部人材をアサインし、適切なチームを組成する。発注サイドがコンサルティングやプログラミング、デザインといった機能別に会社を選定し発注するのに比べて簡単にチームを組成できる。

これらは、ギルドが持つ「関係性」や「自由」 といった本質的な力によってもたらされる。いずれの面も、動的個人と静的従来型の静的会社組織の中間に位置する特徴的な機能だと考えている。

 

ギルドに興味を持ったきっかけ

きっかけは、前職からの友人であり、現在もパートナーであるTOP GATEの加藤代表から「Team Guild という合同会社を立ち上げた」という話を聞いたことである。そのキャプチャを以下に貼り付ける。リンク先にはスキームの概要が記載されているので、興味のある方はご覧いただきたい。

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Team Guild のWEBサイト

「正社員でもなく、ただのフリーランスでもなく、自由だけど仲間がいる」というコピーに、なんとなく心を惹かれた。

自分自身が2018年6月で一部上場企業を退職してフリーランスになったばかりで、"自由" という単語に敏感だったこともあり、「参加される方に対して決して自由を奪いません。参加しつつ他の場所で働く事も、働かない事も自由です。しかし、自由でありながらも、仲間を得る事が出来ます。」という謳い文句は魅力的に映った。

加えて、大企業や未上場のベンチャー企業、学生スタートアップなど多様なフェーズの企業に所属してきた経験から「これからの組織のあり方」に関心があった。少子化で人的リソースが希少化する中、加速度的に変化のスピード感を増す市場の中で生き抜いていくための組織としての最適解は何だろうか、という漠然とした好奇心だ。

 

ランサーズとの取り組み

(この章はPR寄りです)

個人単独よりは公共性があり、いわゆる「カイシャ」より自由。

そんな「ギルド型組織」の存在や、それを支える「関係性」が、個と企業との関係をもっとなめらかに、そしてアクティブにしてくれるのではないか。

ランサーズと取り組んでいる、「社内リソースで解決できない課題を抱えるエンタープライズなプロジェクトと、高い専門性を持つフリーランスとのコラボレーション創発」プロジェクトは、そんな想像から生まれたものだ。

組織というものは、ともすれば再現性を求めるあまり個人を型にはめがちで、それゆえに市場の変化への柔軟性を犠牲にしてしまうこともある。変化のスピードが早い現代に適応できる新しい組織のあり方を、厳格なルールではなく、関係性によってしなやかに形を変えるギルド型組織は、経済的・精神的・技術的に、深く複雑に環境に適応している。

このような組織のあり方を応援することで、個のポテンシャルにより大きなレバレッジをかけ、社会・経済に貢献する。そんなことができたらすばらしい。

 

Photo by rawpixel on Unsplash 

ペルソナ 作りっぱなしになってませんか

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どういう理由かわからないが、IT業界において「ペルソナ」という用語はとても浸透している。

マーケティング部門はもちろん、経営企画や広告部門、様々な事業部に属するホワイトカラーの間でも普通に認知されており、「ターゲット」とほぼ同義の使われ方をしている (体感)。

 

新規事業開発においても「まずはペルソナを決めましょう」とか「そのビジネスのペルソナは誰ですか?」というやり取りをよく耳にするんだけど、この文脈で出てくる「ペルソナ」様はたいてい役に立たない。

 

元々 心理学の用語 だったペルソナが、いつからマーケティングの分野で使われはじめたのか、実はよくわかっていない。私が記憶している一番古い事例は、確か2008年頃、ウォルマートで売場づくりを行う際に、店舗設計やプラノグラム (plan on diagram、グルーピング・ゾーニング・フェイシングのよなプロセスを経て店舗の棚割りを決める工程) 、接客やレジ打ちといった実務を担当する社員間で、想定している顧客像がバラバラだったのを統一的に扱うために作り上げられた人物像だったと思う。うろ覚えだが、キャサリンとかなんとかという名前がついていた気がする。間違ってたらごめんなさい。

 

その後、ペルソナという言葉は日本に輸入され、商品開発などの分野で応用されていた (体感)。

 

「この化粧品を使うユーザーはこういう感じ」

「だったら外箱はこういう感じじゃね」

「売り場はこうだよね」

 

マーチャンダイジングの現場におけるペルソナは、ペルソナ仮説 (サービス提供側が考える "多分こうだよね" という仮説) に基づいたインタビューや、エスノ調査から裏付けられ設定される。

 

エスノ (ぐらふぃ) 調査については、ぐぐったらこのような説明があったので参考に掲載しておきます。

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出典 : 行動観察/エスノグラフィー | マーケティングリサーチ・市場調査ならレアソン

※ 専門家のみなさんから見ると上記の説明もなんだかな、と思うかもしれませんが雰囲気ですので勘弁してください。

 

先程、"新規事業開発で出てくるペルソナは役に立たない" と書いたが、それはだいたいが "ペルソナ" ではなく、作りっぱなしの "ペルソナ仮説" だからだ。検証されていないペルソナ仮説を基にビジネスを行ってうまくいくはずがない。

 

さらに最悪なのは、そういった仮説でしかないものを、あたかもファクトのように扱って「ペルソナがこうだからマーケティングはこう」とか「ペルソナに併せてUIはこう」のような実投資が行われるプロジェクトだ。恐ろしい話だが、これは実際にある。そして当然結果がでないわけだが、担当者は「おかしいな」となってしまう。

「ペルソナを作成することで効率的な、刺さるマーケティングができます」と教えられているからだ。メソッドの誤解による弊害は「カスタマージャーニー」も同じくらいあると思う。仮説を信じることで新規事業につきまとう「正しいものがわからない不安」が麻薬的に和らぐが、そのツケは実損として上がってくるだけではなく "内面化された誤謬" という取り返しのつかない事態を招く。

 

ウォルマートの例でも、MDの例でも、ペルソナは「実在する顧客」から重要な特徴を抽出し、検証を経て定義される。一方、事業開発やWEBマーケティングの世界で出てくる「ペルソナ」は「想定ターゲット」と同様ただの仮説に過ぎない。

 

企画の段階でターゲットのイメージを広げ、顧客接点の上流下流やシナリオやデザインの仮説を作る際に、ペルソナ仮説のような具体的でビジュアライズされたイメージがあることは作業効率に関して言えばプラスだろう、とは思う。

 

新規事業開発の担当者に強くおすすめしたいのは、企画フェーズが終わり、実行フェーズに入ったらすぐに「ペルソナ仮説の検証」を行うことだ。企画段階でペルソナ仮説を持っているチームは非常に多いが、仮説の検証を行っているチームは非常に少ないように感じる。

 

企画段階で「このサービスのペルソナは都市部に住んでいる」「35歳である」といったデモグラフィックな属性が定義されていたら、広告・マーケティング実行時はそれより広い範囲 (当然メリハリを付けるのはよい) に配信し、仮説を検証するといい。

 

「都市部と過程したが、その他の属性を揃えると郊外と反応率が大きく変わらない」「35歳と仮定したが、40代の方が反応がよい」といった想定外の結果が出た場合、ペルソナを破棄してデータを基づいたチューニングに移行するか、ペルソナ仮説の再定義を行う必要がある。一般に、ペルソナは1つ、多くても3つ程度に集約するため、全体の整合性が揃ってはじめて意味がある。この例では、年齢が異なってしまえばライフスタイルや嗜好性、年収といった、ペルソナに設定されているその他の意味が価値を失ってしまう。

 

多少なりとも顧客がついてきたのであれば、顧客がいなかった頃のペルソナ仮説は破棄して顧客にインタビューやアンケートを行い、新規で再定義してもよい。インタビューの結果、サービスがニーズのロングテールを拾っている場合 (かつインターネットビジネスの場合)、ペルソナやカスタマージャーニーといった集約型の仮説立案・検証プロセスは相性が悪いのかもしれない。

 

今回は「ペルソナ」という単語を取り上げたが、"検証されない仮説は、仮説ですらない"、"思い込みにとらわれない" といったリーンスタートアップの原則に基づいて曇りなき眼でデータに向き合い、正しく打ち手を決めていただければと思う。

 

photo by Katie Inglis

 

 

 

 

事業の "無理のしどころ" について

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先日、他社の事業責任者の人と会話をしていて、「どこで無理をするか」という話になった。
 
最近はリーンスタートアップやデータに基づくKPI管理が一般的になってきたので、事業推進における不確実性はリスク許容度の中でコントロールされ、出資者も安らかだろうと思う。 
内部環境はそれでもいいが、外部環境はそんなことおかまいなしに変わってくるので、成長を志そうと思うとどこかで大きくリスクを取り、勝負を賭けるタイミングが出てくる。
 
先程の、事業責任者の会話の中で感じたのは、ベンチャー起業家と社内起業家の「勝負」に対するスタンスの違いだ。
ベンチャー企業家は、投資家に急激な成長を促されるので資金に対してレバレッジをかけて未熟な社内リソースや未検証の確実性を最大限ストレッチさせて勝負を賭ける。どこまでカネを増やせるか、というところがポイントになる。
 一方、出資を受けていない社内起業家は、社内クレジット、つまり自分に対する会社からの「信用」に対してレバレッジをかける。
 
どちらがよい・悪いということにはあまり興味がないので、単にどういう条件付けがどういう行動を引き起こすのか、という点を考えてみたい。
 
個人的な経験則だが、ベンチャー投資家は個々の事業だけでなくポートフォリオの打率でものを考えるので、ホームランを求める傾向にあると思う。投資ラウンドが進めば過去の投資にレバレッジも効くので早く・高い成長率を求めるインセンティブも大きい。
 
一方、社内起業家のスポンサーである経営陣 (株主が新規事業に積極的な大企業は少ないと思う) は、ベンチャー投資家と比べて金銭的な成果より説明の納得感やチームの成長を求める傾向にあると感じる。投資の母体である「組織」とは、そもそも再現性を求めて作られたものだからだ。
その結果、事業責任者はどう動くかというと、前者、投資家から出資を受けたベンチャー投資家はアグレッシブだ。破滅するか成功するかという二者択一の中でストレッチな目標を追い続ける。後者の社内起業家は、組織とのコンセンサスに対してより誠実であろうとする。現代国内の株式会社は、出資者が再現性 (利回り) に投資する構造体だから変化する環境下では縮小均衡に向かうと思う。
 
結局、ディスカッションしている当事者間でそれらしい結論はなにひとつ出なかったけど、どちらの場合でも意思決定が暗黙的なバイアスを受けている可能性を意識するという意味では視界を広げるおもしろいやりとりだった。
 
人は自分の経験に大きく影響される。だからこそ、違うバックグラウンドを持つビジョンの近い友人・知人との交流でしばしばリフレームすることはとても大切だと思う。
 
フリーランスである今年は、昨年以上にたくさんの人と事業の考え方について交流していきたい。

赤字のメディア事業を再生した話

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「赤字のニュースメディアがあって、潰そうか迷ってるんだけど再生やってみる?3ヶ月好きにやっていいから黒転 (黒字転換) させて。」

 

みたいな感じでターンアラウンドを任されたことがある。昨日飲んでいた先輩が、今はそこの社長をやっていて昔話になり、久々に思い出したので書いてみる。

 

何年も赤字だった事業を再生するのに「3ヶ月」っていうのはまあまあ大変だな、とは思ったが、何事もやってみなければわからないのでとりあえず引き受けた。

 

時間がないのでメディアの中身に手を入れている暇はない。収益性を高めてコストを下げる施策を淡々とやっていく。

 

当時のメディアは AdSense べた張りで、RPM (Revenue Per mille、広告枠1,000表示あたりの収益性) は平均20円、良くて30円といったところだった。UUは数百万台後半。歴史あるメディアなのでオーガニック含め新規流入はほぼなく、フリークエンシーは高い。ユーザーのアフィニティカテゴリは TV Lovers などいわゆるマス属性でそこまで高く売れる Cookie ではない。

 

とりあえず、良さそうな場所に枠 (広告枠のこと) を設置し、Ad Server を立てて4重にした。純広→ Criteo → SSP → AdSense という流れだ。Ad Server はタダなので Google の DFP ( DoubleClick for Publishers ) にした。トラフィックが増えると有料化の電話がかかってくるらしいが、規定の表示回数超えてもとうとう請求はこなかった。AdSenseが結構表示されていたからだろうか。

 

純広は売っていないのでとりあえず設定として作るだけ。

 

期待は Criteo さんだった。そこまでよい Cookie とは思えなかったので祈るような気持ちだったが、結果は素晴らしかった。10%〜20%くらいの Cookie が、RPM 90円〜120円 で売れた。

 

Criteo が買わなかった Cookie は RTB (Real-Time Bidding、競売みたいなもの) にかけた。たしか、Micro Ad・Fluct・Nend、あともう1社くらいだったと思う。当時は Fluct が割と成績よかった気がする。あとからジーニーがよいという話を聞いて検討したが、導入する前に会社を辞めたので使わずじまいだった。

 

枠の場所ごとに AdSense の成績をベースに目標価格を設定し、目標以上の最高値を付けたSSPへ優先的に販売していく。成績の悪いSSPも、消してしまうとベンチマークがなくなるし、常に数字は動くので Ad Server の設定で10%くらいは残しておく。

 

最後まで売れ残った Cookie は AdSense に売る。

 

数字はかけないが、平均のRPMは激増した。「あれだけ広告だらけにすりゃ、それは儲かるさ」などと言われたが、大事なのは枠の数ではなく収益性である。だれに何の広告が表示されているかのマッチング精度が大事。

 

この時点で黒転は見えてきたが、並行してコスト削減を行った。当時、そのメディアは本社が運営していたが、よりコストの安い子会社に運営を移管。運営チームもスマートにして人件費を最小まで圧縮した。開発体制の移管はちょっと手間だったが、赤字のレガシーシステムを面倒見なくて済むのは嬉しいということで、引き継ぎはスムーズだった。

 

続いて、仕入れていたコンテンツの収益性を1社1社算出し、仕入先のリストラを行った。コンテンツ閲覧ユーザー属性ごとの閲覧数で仕入れ費用を除し、費用対効果を一覧化。効率の悪い仕入先とは個別交渉し、価格が下がらなければ契約を停止した。

 

オリジナルコンテンツは外部の制作会社に発注していたが、記事ごとの費用対効果を毎回検証し、結果を出せるライターの選定と、より読まれるコンテンツづくりを目指した継続的な改善をディレクターに管理させた。

 

結果、3ヶ月後には黒転どころかかなりの利益を出せるようになった。

 

その後の施策として、当時生まれつつあったネイティブアドを導入したがこれが、ここに掲載されたゲーム系の広告がユーザーに刺さり、収益性はもう1段あがった。レコメンド型はいまいちだったが、フィード型は非常によい成績だった。

 

やり始めて3〜4ヶ月くらいでグロスの売上は3倍くらいになったが、ネイティブアドの成功で4倍くらいまでいった。その後、DMPでの Cookie 販売や、コンテンツの見直しなどを計画していたが、本社から社長が派遣され、子会社化することになったのでその人に任せて私は会社を辞めた。

 

どこの会社でもそうだが、売上が大きくなったり収益化すると自由にできるフェーズは終了。あとは大人の世界である。

  

 

 

メディア事業の再生は初めてだったが、広告にも詳しくなったし、数字で結果が見えるのはとても楽しい。

 

ターンアラウンドは好き勝手やれるので好きだ。

 

 

 

Photo by rawpixel on Unsplash

ランサーズの「フリーランスCMO」という謎のロールにアサインされた件について

「フリーランスCMO」という謎の役職にアサインされました。

 

「社内リソースで解決できない課題を抱えるエンタープライズなプロジェクト」と、「高い専門性を持つフリーランス」とのコラボレーション創発が当面のミッションです。

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振り返ってみると、こうなったきっかけとしては大きく2つあったような気がします。

 

ことしの夏ごろから、アドバイザーとしてランサーズさんの事業に関わってきたのですが、その過程でフリーランスという存在は世の中にとって、いま必要なものなんじゃないかと思いはじめたんです。

 

ひとつめ。 

主にデジタル化に起因した新しく専門性の高い技術や知識を、企業は自社の社員だけで賄うことはできなくなっている、というリアルな感触がありました。

 

以下は、国内企業のリーダー職以上600名に対して行ったアンケートの結果です。フリーランスに求められているのは「安さ」よりも「高い専門性」でした。

 

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ランサーズのWEBサイトで仕事一覧を覗いてみると、比較的低単価の案件が多いのですが、まだ見えていない市場があるんだな、と。これはもうちょっと深掘りしてみたいと感じました。

 

そこで実際の企業にヒアリングをしてみようと、とある大手広告代理店のプロデューサーに、聞いてみました。

 

自分「今、どんな業種でフリーランスを探してます?」

 

プロデューサー「UnityエンジニアとUI/UXデザイナーかな。」

 

意外な答えが帰ってきました。広告代理店のプロデューサーなので、カメラマンとかコピーライターみたいな回答が帰ってくるものだと。

 

「企業の顧客コミュニケーションは、いまやデジタルを抜きには語れない。国際的な広告賞受賞作品もインタラクティブなやつが年々増えているよね。で、社内にできる人いないからエンジニアとUXデザイナー超さがしてる。」

 

確かに、広告代理店のプロパーにUnityエンジニアはあまりいなそうな気がします。

 

その後もインタビュー (飲み会) を重ねると世の中のニーズや変化に敏感である企業ほど、自社のケイパビリティに足りないものを正確に認識し、外に目を向けはじめているな、と実感しました。

 

 

ふたつめ。

働き盛りの20代〜40代は今の環境で新しいビジネスを生み出さなければならず、そのためにチャレンジする環境が必要だと感じます。フリーランスにならずとも、複業や兼業によって新しい領域に携わることで、スキルアップやイノベーションの可能性を高められるのではないかと。

  

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上図は、事業のステージと不確実性の関係性を表したものです。できるかどうかの新規事業も、成長するに従って不確実性をコントロールするようになり、最後には不確実性の排除に努めるようになります。この流れは不可逆です。

 

高度経済成長期に発展した日本の中核産業、例えば製造業なんかは、ステージ3にあたります。ミッションクリティカルな領域なので、新しいスキルや技術を試すことや、チャレンジすることはリスクとみなされマイナスのインセンティブが生まれます。

 

デジタルサービスやソフトウェアみたいな新しい産業は、不確実性が許容されるステージ1〜ステージ2の方がやりやすいので、ステージ3にいるけど新しいことやりたい人は複業とか兼業とかの選択肢があるといいんじゃないかと。

 

もちろん、人間には性分というのがあって、「昨日と同じ明日がくることを望むタイプ」と「力あるものが望むままに変えられる世界を望むタイプ」、人の好みは十人十色。個々人がやりたい仕事を、柔軟に選択できる環境があったらなー。

 

 

そんなこんなで、 

フリーランスという働き方は、いま、いいかもなー

 

と感じはじめていたのですが、私個人の感想はともかく、現実的な課題もあります。

 

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前述の通り、企業はフリーランスの持つ高い専門性に魅力を感じ、活用を思考しているのですが、実に3割近い企業で禁止されている。「使いたくない」と回答している層についても、使いたくない理由の31%は「会社で禁止されているから」だったりする。

 

企業とフリーランスの間に横たわる溝は深い。。。

 

 

ちょっと長くなりましたが

フリーランスという働き方に興味を持った自分は (自分自身も7月からフリーランスだしw) 自分は以下のようなことをやってみたい、と、ランサーズ社長の秋好さんに話しました。

 

①フリーランスを使いたくても使えない企業に、ソリューションを提供する

②フリーランスを使いたくても、実際、優秀なフリーランスは見つけづらいので見つけやすくする

 

それでまあ、需要サイドの期待値と供給サイドの提供価値のギャップ解消や、 Problem/Solution Fit の発見はマーケティングだし、リーチしてないターゲットだからチーフだよね、でもフリーランスだからそこは明確にしないとね、って感じで「フリーランスCMO」という一風変わった肩書きをいただきました。

 

プレスリリースが出たあと、「フリーランスでCMOってのが、ランサーズのビジョンを示してていい」なんてメッセージをもらったので、よくわからないこともないのかな。

 

いずれにせよ、そういうわけでやっていきますので、高い専門性を持つフリーランスを探している方、チャレンジングなミッションに挑みたいフリーランスや複業の方、いらっしゃいましたら kyo.naoto@lancers.co.jp または naoto@karmanline.co.jp までご連絡ください。

 

 

1-4. 新規事業の企画と戦略立案 (前編)

はじめに

お世話になっております。
カーマンライン株式会社の直人です。

今回は、新規事業開発における企画と戦略立案について説明します。

 

本章のゴール

「新規事業開発の企画・戦略立案」といっても、それこそ環境や事業内容によってケースバイケースとなるのが当然です。どこから説明してよいか難しいため、本稿では新規事業の提案書テンプレートを埋めていく形式で基本的な流れや要点を説明していきます。 

新規事業企画書の流れ

本稿で説明する企画書の流れは以下のようになります。仕事の流儀は十人十色、お好みにカスタマイズしてください。

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図中にある通り、大きく「なぜやるのか?」→「何をやるのか?」→「どうやるのか」という流れになっています。

このあたりはまあ、定番というものもないのですが、アドバイスとしては「プレゼンの大きな流れを意識しながら作りましょう」という感じでしょうか。

枝葉末節に囚われて時間配分を間違えたり、論理展開を見失ったりしなければいいんじゃないかと思います。

 

たいがい余談ですが、サイモン・シネック先生は「WHYから始めよ」と言っています。

 

WHYから始めよ!―インスパイア型リーダーはここが違う

WHYから始めよ!―インスパイア型リーダーはここが違う

 

 

①提案の背景

新規事業の説明に先立って、まず、企画を提案する背景を説明します。

新規事業プレゼンの場には、決裁者だけでなく上司、提案者、同僚、株主、部下など様々な関係者が参加します。そのようなステークホルダーと、立場を超えてゴールに対する共感・合理性を醸成するのが狙いです。

このスライドを作る際、説明する際の一人称は「我が社」「当社」であるべきです。

 

作成にあたっては以下の記事が参考になると思うので、よろしければご参照ください。

 

 

スライドのイメージとしては、例えばこのような感じです。

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キーメッセージの例にあるように、企画の必然性と共感を得るためにはファクトを中心に構成する必要があります。

キーメッセージ例

  • 驚異から導く必然性
    「近年、(業界) においては (先行事例) のような新規参入が相次いでおり、(驚異) のような影響がある」
  • 機会から導く必然性
    「(業界) では (機会) の成長が著しく、当社の (強みやアセット) を活用することで勝機がある」

本ブログでも何度か紹介している クリステンセン を挙げるまでもなく、全く新しいアイデアに賛同する人は少なく、むしろ少ないがゆえに新しくありえるのです。

これから説明する新規事業アイデア、つまり新しいアイデアは、多数決なら「順当にいって否決」という運命を背負っています。その運命を覆すために、最初のスライドでは「否定し難い事実」に立脚して議論の突破口を開く役割を担っています。

 

「機会」と「驚異」どちらに着目すべきか

事実に対する分析を起点として、「世の中こうだから、こうしないとやばい」という展開にするのか、「こんなチャンスが眼の前に転がっているのに挑戦しないのは愚かだ」という展開にするのかは難しい選択です。

もちろん正解はないのですが、私個人は意思決定者が「機会」と「驚異」のどちらにセンシティブかで決めます。

「機会」に敏感な意思決定者は、直感的な判断で成功した経験を持っていたり、投資家からストレッチな収益目標を課せられていたり、資金が余っていたり (お金を使わないと怒られるとか)、足元の (短期の) 運用実績が良くて押せ押せモードに入っていたりする人たちです。

逆に「驚異」にセンシティブな意思決定者は、成熟産業に携わっておりシェア拡大が停滞している、もしくはシェアが落ちている業界のリーダーなどです。

一方、「機会」「驚異」どちらにも反応しない属性もあります。例えば、直近の意思決定で連続して負けていたり、保守的な投資判断とROIで十分生活できることに満足していたり (定年間際とかも含め)、失敗に対する賞罰が大きかったりする人たち (例えば大企業では成功しても給与は大して上がらないが、失敗すると出世競争で負け人生設計が狂うという、リスクテイクできない属性が存在する) などが挙げられます。

いずれにせよ、リスクを取るのもお金を出すのも意思決定者なので、彼らの気持ちに寄り添って考える、というのが新規事業という社内起業家の立場を前提とした場合の順当な考え方だと考えます。

 

②事業概要

「提案の背景」に続く事業概要は、これから話す内容に関心を持ってもらうための「掴み」に相当します。

先ほど「提案の背景」は、ファクトに基づいて合理的にステークホルダーの論理的・感情的な同意を得るためのものだと述べました。これはこれで重要なステップなのですが、合理的な話というのは得てして退屈なものです。ましてや自分たちの事業領域について、再確認されたら「そんなことわかってるよ、バカ」と退屈に思い始める方も少なくないでしょう。

ですので、そこに続く事業概要は企画の要点を端的に述べつつも少し遊ぶような気持ちで作りましょう。やることは「センセーショナルなビジュアルやキャッチで盛りつつ、端的かつ直感的に事業を説明する」です。

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企画の内容を盛ったり煽ったりしても、プレゼンが終わった後には印象しか残りません。質問やツッコミが出たとしても、聞いている相手が能動的になってくれたらこの段階ではプラスだと考えます。

プレゼン・提案を何度もやっていると、稀に決裁権限者が開始5分で寝始めるようなシチュエーションにも出会います。そういう際は、「ああ、文字が多すぎたんんだな」「ありきたりな話に時間を使いすぎたんだな」と反省するのが精神を健康に保つコツです。

アイデア出しについて

よくいただく質問として「アイデア出しの方法」があるのですが、正直わたしもあまり得意な方じゃないです。

苦手な人なりのやり方を紹介してますので興味がある方はどうぞ。

blog.karmanline.co.jp

 

終わりに

ちょっと長くなってしまったので後編に続きます。

雛形とサンプルは最後にアップロードする予定ですので、もうしばらくお待ち下さいmm

 

文中で紹介したサイモン・シネック先生の素敵なプレゼンを紹介しておきます。

 

 

それでは、よろしくお願いいたします。

 

Google Home を G-Suite のカレンダーと連携させる方法

 

お世話になっております。
カーマンライン株式会社の直人です。

 Google Home と G-Suite のカレンダーの連携でハマったので解決方法をメモ。

Google Home は G-Suite のカレンダーにアクセスできない

※2018/10/05 時点

まさかと思いましたが、本当でした。 

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カレンダーと予定を確認する - Google Home ヘルプ

 

解決方法

海外のエンジニアが GAS で G-Suite の予定をエクスポートし、個人のカレンダーにインポートするスクリプトを実装してくれていたのでそれを使うことでなんとか連携できるようになりました。

以下に書いてあることが全てなので、英語読める人は直接見てください。

用意するもの

  • 個人用の (G-Suiteではない) Google カレンダー
  • G Suite のアカウントで作った Google カレンダー
  • G Suite のアカウントで作った Google Spreadsheet

手順

  1. 個人用のGoogleカレンダーを、G Suite アカウントに共有する。

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    その際、「予定の変更権限」以上の権限を付与。

  2. Github の code.gs  のコードをコピーする。 
    リンク : GitHub - Sync your G Suite Calendar to your personal Google account so you can access events via Google Home
  3. G-Suite アカウントで 新しい Google Apps Script プロジェクトを作成し、上記でコピーしたスクリプトを貼り付ける。

  4. G-Suite アカウントで空のスプレッドシートを作る。

  5. コード中の値を自分の環境に併せて変更
    6行目 : var companyName = "<Your G Suite Company Name>"
    13行目 : var personalGoogleAccountID = "<your.name>@gmail.com"
    37行目 : var sheetID = "<your_spreadsheet_id>"
    ※ 予め G-Suite 側で空のスプレッドシートを作っておく
    ※ <your_spreadsheet_id> がわからない方は 【GAS】GoogleスプレッドシートIDの見方 参照

  6. 手動で実行する。
    セキュリティの警告が出る場合があるので適切に対処 (気になる場合は諦める)。
    プロジェクト (アプリ) にカレンダーなどのアクセス権限を付与するダイアログがでるので確認の上、付与する。

  7. 定期的に自動実行できるよう、トリガーを設定

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  8. 実行結果を確認する。
    スプレッドシートに予定が書き出されており、それが個人のカレンダーに登録されていたら成功。

 

公式な方法ではないけど、これで一応 G-Suite のカレンダーを Google Home で確認できるようになる。

 

早く公式対応されないかなー。